国民年金(老齢基礎年金)の繰上げにおける注意点とは?③

 老齢基礎年金の繰上げ請求についての注意点は次のような点も挙げられます。

 

⑤年金選択関係による不利益や請求不可となる不利益

 

 老齢基礎年金の繰上げ請求とは65歳到達前に請求しますので、65歳前に遺族給付や障害給付の受給権を得た場合には、繰上げ支給の老齢基礎年金と発生した遺族給付や障害給付との何れかの選択関係に発展することがあります。

 

 60歳到達前に遺族給付や障害給付の受給権が発生している場合は、通常、そのことも考慮して老齢基礎年金を繰上げ請求するかを決定するはずですので不利益を生ずることは少ないと思料されます。

 

 しかし、典型的な例として、60歳到達以後、老齢基礎年金を繰上げ請求した後に配偶者等の死亡により遺族厚生年金が発生する場合、繰上げ支給の老齢厚生年金か遺族厚生年金の何れかを選択することになり、遺族厚生年金を選択する場合には繰上げ支給の老齢厚生年金が支給停止となるため繰上げ請求が結果的に不利益となることがあります。

 

 また、遺族給付のうち寡婦年金については、死亡者が繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権者であった場合には請求不可となるため、繰上げ支給の老齢厚生年金を受給して数月のうちに死亡した場合には妻にとって結果的に不利益となり得ることもありますし、繰上げ請求を行った後に交通事故等で障害状態となったとしても障害基礎年金の請求が出来ないという不利益もありえます。

  

 老齢基礎年金の繰上げ請求を行う理由は個々人により異なると思いますが、経済的に困難である等の理由ではなく、噂話等によって安易に繰上げ請求を行なうことは今までに触れてきた理由により不利益となることもありえますので、個々人の置かれた状況により様々な視点からの検討を行なうことが最も重要であるといえます。