遺族年金の併給について⑥

2.旧法遺族年金と新法老齢基礎年金、新法老齢厚生年金

 

 旧法時代に遺族年金の受給権が発生した方は、旧法遺族年金(通算遺族年金)を受給している場合がありますが、旧法遺族年金(通算遺族年金)受給者の方については65歳前の場合は特別支給の老齢厚生年金との選択となることは変わりませんが、65歳以降の新法老齢基礎年金および新法老齢厚生年金の受給権が発生した場合には以下の内容で選択することになります。

 

① 旧法遺族年金+新法老齢基礎年金

 

② 新法老齢厚生年金+新法老齢基礎年金

 

 上記のように、新法老齢基礎年金の他に新法老齢厚生年金か旧法遺族年金のいずれかを選択することになります。

 

新法老齢厚生年金と新法遺族厚生年金とは異なり、純粋にいずれかを選択することになります。

  

 旧法と新法は制度体系が異なるため基本的に併給は出来ないことが通常ですが、一部の年金については併給が可能なこともあり、上記はそのうちの一つとなっています。

遺族年金の併給について⑤

1-3.新法遺族厚生年金と新法老齢基礎年金、新法老齢厚生年金

 

 平成19年3月以前は、配偶者の遺族厚生年金は以下の中で一番多いものを選択受給することになっていました。

 

① 新法遺族厚生年金+新法老齢基礎年金

 

② 新法老齢厚生年金+新法老齢基礎年金

 

③ 新法遺族厚生年金の3分の2と新法老齢厚生年金の2分の1+新法老齢基礎年金

 

 このうち、①と③を選択する場合には、本人の新法老齢厚生年金を全く受給しないか一部受給するという扱いとなっていたため、制度改正を行い本人の新法老齢厚生年金を優先受給する扱いとし、新法遺族厚生年金は差額支給するという扱いになっています。

  

 但し、平成19年3月以前に新法遺族厚生年金の受給権が発生している場合は、平成19年4月以後の制度改正の対象とはならず、上記の①から③までの選択受給は可能となっています。

遺族年金の併給について④

1-2.新法遺族厚生年金と新法老齢基礎年金、新法老齢厚生年金

 

 現在の新法遺族厚生年金額の算定にあたっては、新法遺族厚生年金額または新法遺族厚生年金の3分の2と受給権者となる者の新法老齢厚生年金額の2分の1の額の合算額の何れか高い方が支給されることになっています。

 

※配偶者の死亡の場合のみ。配偶者以外の死亡の場合には原則通り死亡者の報酬比例部分の4分の3の支給となる

 

 その上で、新法遺族厚生年金、新法老齢厚生年金の額を比較し、新法遺族厚生年金額が新法老齢厚生年金額を上回っていれば差額支給、新法老齢厚生年金額が上回っていれば全額支給停止となります。

 

 なお、新法老齢基礎年金については、新法遺族厚生年金と併給する場合でも制度が国民年金と厚生年金で異なるため調整対象とはならず全額支給されることになります。

遺族年金の併給について③

 遺族年金を併給する場合でも、当該受給者が受給している年金が昭和61年3月以前の旧法による年金であるか昭和61年4月以後の新法による年金であるかによって併給の内容は以下のように異なってきます。

 

1.新法遺族厚生年金と新法老齢基礎年金、新法老齢厚生年金

 

 新法遺族厚生年金と、新法老齢基礎年金、新法老齢厚生年金の場合は、65歳以上の場合は併給という考え方になるので、選択の余地はありません。

 

 言い換えると、65歳未満であれば新法遺族厚生年金と特別支給の老齢厚生年金の選択受給となりますが、65歳以上であれば新法遺族厚生年金と新法老齢基礎年金、新法老齢厚生年金は同時に受給することになります。

 

 ですが、新法老齢厚生年金と新法遺族厚生年金は同時受給とはなりますが、新法遺族厚生年金額は、新法遺族厚生年金額から新法老齢厚生年金額を差し引いた差額支給となっています。

 

 そのため、新法遺族厚生年金額が新法老齢厚生年金額を上回れない場合には全額支給停止となるため、結果的に新法遺族厚生年金は支給されないことになります。

遺族年金の併給について②

 遺族年金は65歳前は1人1年金が原則ですのでいずれかの年金を選択受給することになりますが、65歳以降は同一支給事由でなくとも併給が可能となっています。

 

 但し、「併給出来る」という意味は全ての年金を一緒に受け取れるという意味ではありません。

 

 例えば、遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金がありますが、この他に老齢年金や障害年金の受給権がある方が遺族年金とこれらの他の年金を全て同時に受給することは出来ません。

 

 年金は、現在、国民年金による基礎年金と厚生年金による厚生年金に分かれておりますが、「併給出来る」とは基礎年金部分や厚生年金部分を他の年金に置き換えることが出来るという意味になります。

 

 例えば老齢基礎年金を障害基礎年金や遺族基礎年金に置き換えて受給することが可能であり、障害基礎年金と遺族厚生年金という組み合わせも可能という意味です。

 

 ですが、この併給は全ての組み合わせが可能というわけではなく、遺族基礎年金と老齢厚生年金、老齢基礎年金と障害厚生年金、遺族基礎年金と障害厚生年金という組み合わせは出来なくなっていますので、その点には注意を要します。

遺族年金の併給について①

 遺族年金を受け取る場合であっても、どのように遺族年金を受け取るかについては人それぞれの状況によって異なります。

 

 まず、65歳前に遺族年金を受給する場合は、その他に老齢年金や障害年金等の他の年金の受給権がある場合であっても、1人1年金の原則からいずれかの年金の選択受給となります。

 

※例外的に同一事由であれば併給可能なため、65歳前であっても遺族基礎年金と遺族厚生年金は選択受給の対象とはならず併給が可能です

 

 そのため、60歳前に老齢年金の受給権が発生した場合も対象となり、それは老齢年金の繰上げ受給も含まれます。

 

 ですので、老齢年金を繰上げ受給しようとする場合には、65歳前に配偶者の死亡による遺族厚生年金を受給する可能性のリスクも考慮して請求を行う必要があります。

中高齢寡婦加算とは②

 中高齢寡婦加算は40歳以上の妻が受給することになりますが、加算が行われるのは65歳までの期間となります。

 

 その理由は、中高齢寡婦加算が65歳から支給される老齢基礎年金の代わりに支給される給付という性格があるためであり、65歳に到達すれば老齢基礎年金が支給されるようになり、老齢基礎年金と遺族厚生年金が65歳以降は併給出来る以上、中高齢の寡婦加算の加算は不要との考え方によります。

 

 また、65歳以降は中高齢寡婦加算対象者となるべき方、つまり、死亡者が原則20年以上の厚生年金被保険者期間がある場合に経過的寡婦加算が支給されることがありますが、経過的寡婦加算とは昭和61年4月前の国民年金被保険者となれた期間が少ない年代の年金額の補填として設けされているものであり、対象となるのは昭和31年4月1日以前の生年月日の方に限られています。

 

 補足として中高齢寡婦加算の額は老齢基礎年金の満額の4分の3の額とされています。

 

 また、遺族厚生年金の受給権発生時点で18歳到達年度の末日までの子がいない場合は受給権発生時点から中高齢寡婦加算が加算されることになりますが、18歳到達年度の末日までの子がいる場合には遺族基礎年金も同時に支給されるため、中高齢寡婦加算が行われるのは遺族基礎年金失権後となります。

中高齢寡婦加算とは①

 中高齢寡婦加算とは、年齢が40歳以上の妻に対し、原則として夫が20年以上の厚生年金被保険者期間を有していた場合に加算されます。

 

※中高齢者の期間短縮特例者(厚生年金被保険者期間が20年なくても老齢厚生年金が受給できる特例)の死亡に該当する場合や短期要件の遺族厚生年金(300月みなしあり)を受給する場合は、死亡者の厚生年金被保険者期間が実期間で20年なくても中高齢寡婦加算が加算されます

 

 「寡婦」といっているように妻に対する加算であり、夫に対しては加算対象とはなりません。

 

 また、年齢が40歳以上の妻であることが条件となっているため、夫の死亡時に妻の年齢が40歳未満である場合には中高齢寡婦加算の対象とはなりません。

 

 但し、40歳到達時点で遺族基礎年金を受給している妻の場合は、遺族厚生年金の受給権発生時点で40歳未満であったとしても、原則として子が18歳到達年度の末日に到達して遺族基礎年金が失権した後に中高齢寡婦加算が加算される扱いになります。

 

 言い換えると、30歳~40歳未満で子のない寡婦の場合は中高齢寡婦加算の加算されない遺族厚生年金を受給することになり、30歳未満で子がない場合は中高齢寡婦加算が加算されず、かつ、5年の有期年金となります。

遺族厚生年金の短期要件と長期要件

 遺族厚生年金には短期要件と長期要件があります。

 

 短期要件とは一言でいえば本来必要な25年以上の年金加入期間がなくても受給権が発生する要件であり、長期要件とは原則通り必要である25年以上の年金加入期間がある場合に受給権が発生する要件となります。

 

 短期要件とは本来必要な25年以上の年金加入期間がなくても発生する以上、受給権発生段階での厚生年金被保険者期間を元に年金額を計算すると非常に低額となることがあるため、いわゆる300月みなしという考え方があり厚生年金被保険者期間が300月ない場合であっても300月とみなして年金額を計算するため一定額の遺族厚生年金額が保障されることになります。

 

 これに対して長期要件とは、本来必要な25年以上の年金加入期間を満たしている要件であるため、短期要件とは異なり300月みなしは適用されず、受給権発生時点での被保険者期間を元にして遺族厚生年金が算出されます。

 

 また、長期要件該当者が一般厚年期間と共済厚年期間の混在者である場合には、遺族厚生年金については一般厚年期間に基づく遺族厚生年金は国から、共済厚年期間に基づく遺族厚生年金は共済組合からそれぞれ支給されることになります。

 

 なお、長期要件の遺族厚生年金は実際の厚生年金被保険者期間に基づいて計算されるため、25年以上の期間の中でほとんどの期間が国民年金被保険者期間である場合には、実際の年金額がかなり低額となることがあり、この場合に短期要件と長期要件のいずれも満たす方の場合には300月みなしのある短期要件を選択することになります。

 

 このように、遺族厚生年金の短期要件と長期要件が選択可能な場合には、より有利ないずれかの要件を選択することが可能となっています。

遺族厚生年金とは⑦

4.老齢厚生年金または退職共済年金受給権者の死亡

 

 前回までの1~3を短期要件といい、こちらの要件を長期要件といいます。

 

 長期要件に該当する場合はそれだけで遺族厚生年金の支給対象となり、保険料納付要件が問題となることはありません。

 

 但し、短期要件と異なり、遺族厚生年金額はそれまでの厚生年金被保険者期間に応じて算定されるため、国民年金被保険者期間が大多数である方の場合には遺族厚生年金額が低額となることがあります。

 

 また、短期要件と長期要件の両方に該当する場合には、有利な要件を選択することになります。

 

5.老齢厚生年金の受給資格期間を満たした方の死亡

 

 4は老齢厚生年金か退職共済年金受給権者の死亡ですが、こちらは受給権者ではないが25年の受給資格期間を満たした方の死亡のケースです。

 

※老齢厚生年金の受給資格期間は平成29年8月に10年に短縮されていますが、遺族厚生年金の受給資格期間は短縮されておらず、25年の受給資格期間を満たす必要があります

 

 5のケースも長期要件であり、考え方は4に準じますので遺族厚生年金額が低額となることもありますし、短期要件にも該当する場合はいずれか有利な要件を選択することとなります。

遺族厚生年金とは⑥

2.厚生年金被保険者期間中に初診日のある傷病での初診日から5年以内の死亡

 

 1のように厚生年金被保険者期間中の死亡でなかった場合であっても、厚生年金被保険者期間中にその死亡原因傷病の初診日があり、その初診日から5年以内の死亡である場合には遺族厚生年金の支給対象となりえます。

 

 但し、この要件も1と同様に短期要件であり、死亡した日の属する月の前々月以前の保険料納付要件が問われるため注意する必要があります。

 

 特に、退職後は国民年金被保険者となり、手続きの不備や経済困窮等により保険料を納めておらず未納期間としている場合はリスクが高くなるため、少なくとも国民年金保険料の免除申請をしておくことは重要であるといえます。

 

3.1、2級の障害厚生年金受給権者の死亡

 

 死亡した方が1級または2級の障害厚生年金の受給権者であった場合も遺族厚生年金の支給対象となります。

 

 また、この要件は1・2の要件と同様に短期要件ではありますが保険料納付要件が問われません。

 

※障害厚生年金は300月の最低保障があり、今後説明する長期要件の内容に合致するするという意味合いがあります

 

 ですが、保険料納付要件は問われないものの、3級の障害厚生年金では対象とはなりませんし、2級以上であっても障害基礎年金の場合も対象とはなりません。

 

※上記の場合でも、3級の障害厚生年金の原因傷病が悪化して死亡した場合には、傷病が悪化し障害等級の変動があったとして遺族厚生年金の支給対象となることがあります

  

 補足として、死亡者が亡くなってから1級または2級の障害厚生年金の受給権が発生した場合には、その後の遺族厚生年金も連動して支給対象となります。

遺族厚生年金とは⑤

 遺族厚生年金が支給されるためには、死亡した方が次の何れかの要件を満たしている必要があります。

 

1.厚生年金被保険者であったときの死亡

 

 厚生年金保険に加入している厚生年金被保険者期間中に死亡した場合には遺族が遺族厚生年金の支給対象となる可能性があります。

 

 但し、この要件は別名短期要件といい、この要件に該当するためには被保険者期間中の死亡であり、かつ、保険料納付要件を満たしていなければなりません。

 

 保険料納付要件とは、死亡日した日の属する月の前々月以前における被保険者期間全体の3分の2以上が保険料納付済期間か保険料免除期間でなければならないという要件です。

 

※65歳未満である場合には直近1年要件が適用されるため、死亡した日の属するする月の前々月までの1年間に未納がなければ保険料納付要件を満たします

 

 厚生年金被保険者期間中の死亡であったとしても、遺族厚生年金が支給されるためには保険料納付要件を同時に満たす必要があるので注意する必要があります。

遺族厚生年金とは④

 遺族厚生年金を受給するためには前記の何れかの支給該当者である必要がありますが、支給対象者となるためには死亡した方によって生計を維持されていた遺族であることが要件となっています。

 

 生計維持要件としては、年収850万円以上の収入を将来にわたって有する場合は対象とならないことになっています。

 

 具体的には、死亡時点で遺族厚生年金の支給対象者となるためには年収では850万円未満であるか所得では655.5万円未満である必要があります。

 

 但し、死亡時点で年収及び所得の両方が上記の額を超えている場合でも、5年の間で将来的に収入が減少することが明確である場合には、その減少時点から遺族厚生年金を受給することは可能な場合があります。

  

 ですが、「明確」といっているように、死亡時点で将来的に収入の減少が確定しているケースを想定しており、例えば就業規則等で年収の変更が明確であったり事業の廃止が決定しているなどの場合は対象となる可能性がありますが、業績悪化等の年収の変動理由が不確定要素である場合には認められないため留意する必要があります。

遺族厚生年金とは③

4.祖父母

 

 死亡した方に配偶者、子、父母、孫がおらず、祖父母が健在である場合は祖父母が遺族厚生年金の支給対象者となります。

 

 祖父母にも年齢要件は存在し、祖父母が55歳未満の場合は受給権は発生せず、55歳以上の場合であっても55歳から60歳までの期間は支給停止の扱いとなります(若年支給停止)

 

 なお、祖父母が一方のみ健在の場合はその一方のみに受給権が発生し、祖父母ともに健在である場合は祖父と祖母それぞれに按分された遺族厚生年金が支給されることになります。

 

 遺族厚生年金の受給対象者となり得るのは1~4までに該当するものであり、優先順位は1~4の順番で決まり、優先順位が高い方(先順位者)がいる場合は優先順位が低い方(後順位者)は受給することは出来ません。

 

 また、先順位者が亡くなった場合でも後順位者へ受給権は移転(転給)せず失権する扱いとなります。

 

※子と配偶者は同順位であり、子と配偶者は同時に受給権が発生することになります。

この場合、例えば配偶者が失権して子が遺族厚生年金を受けることになるという場合は支給停止の解除であり転給とは異なるため注意が必要です。

遺族厚生年金とは②

2.父母

 

 死亡した方に配偶者や子がおらず、父母が健在である場合は父母が遺族厚生年金の支給対象者となります。

 

 父母にも年齢要件は存在し、父母が55歳未満の場合は受給権は発生せず、55歳以上の場合であっても55歳から60歳までの期間は支給停止の扱いとなります(若年支給停止)

 

 なお、父母が一方のみ健在の場合はその一方のみに受給権が発生し、父母ともに健在である場合は父と母それぞれに按分された遺族厚生年金が支給されることになります。

 

3.孫

 

 死亡した方に配偶者、子、父母がおらず孫がいる場合には孫が遺族厚生年金の支給対象者となります。

 

 年齢要件は子と同様であり、原則は18歳到達年度の末日まで、障害等級1・2級に相当する障害状態である場合は20まで受給することが可能です。

 

 なお、孫が複数ある場合は孫それぞれに按分された遺族厚生年金が支給されることになります。

遺族厚生年金とは①

 遺族厚生年金とは厚生年金保険法による給付であり、遺族基礎年金とは異なり支給対象者となり得るのは以下の方になっています。

 

1.配偶者、子

 

 死亡した方の配偶者および子が受給権者となり得ます。

 

 なお、子と配偶者は同一順位ではありますが配偶者に遺族厚生年金の受給権がある間は支給停止となります(配偶者に遺族厚生年金の受給権がない場合は子に支給)。

 

 また、配偶者に遺族基礎年金の受給権がなく子に遺族基礎年金の受給権がある場合も子への支給が配偶者に優先することになります。

 

 補足として、配偶者が妻の場合は年齢要件はありませんが、夫の死亡時に18歳到達年度の末日までの子がおらず、かつ、30歳未満の場合は5年の有期年金となります。

 

 配偶者が夫の場合は、妻の死亡時に55歳未満であれば遺族厚生年金の受給権は発生せず、55歳以上であれば遺族厚生年金の受給権は発生しますが55歳から60までの期間は支給停止の対象となります(若年支給停止)。

 

※夫が55歳から60までの年齢で上記の若年支給停止になる場合であっても、18歳到達年度の末日までの子(障害状態であれば20歳まで)がおり、障害基礎年金の支給対象者である場合は遺族厚生年金の支給停止が解除され、遺族基礎年金と遺族厚生年金を同時に受けることが出来ます

 

 子の場合は原則として18歳到達年度の末日までであれば受給権は発生し、仮に障害等級1・2級に相当する障害状態である場合は20歳まで期間が延長される扱いとなっており、子が複数存在する場合は子の数に応じて遺族厚生年金が按分されて支給されます。

遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一金の関係について

 国民年金法による遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金についての関連性をまとめると次のようになります。

 

1.遺族基礎年金

 

 遺族基礎年金が発生する場合は死亡一時金は対象となりませんが、寡婦年金が同時に受給できる場合は選択受給となります。

 

 また、遺族基礎年金の失権後であっても寡婦年金の支給要件を満たしている場合は、受給開始年齢到達後に寡婦年金が支給されることに注意が必要です。

 

2.寡婦年金

 

 遺族基礎年金と寡婦年金は時期が重なる場合は選択、重ならなければ遺族基礎年金受給後の寡婦年金の受給も可。

 

 死亡一時金とは選択となります。

 

3.死亡一時金

 

 遺族基礎年金と同時に発生する場合は不可。

 

 寡婦年金とは選択。

  

 遺族厚生年金とは同時受給が可能です。

死亡一時金とは③

 死亡一時金を請求することが出来るのは遺族基礎年金の受給権が発生しない場合に限られます。

 

 言い換えると遺族基礎年金を請求せず死亡一時金の請求をすることは出来ません。

 

 また、寡婦年金と死亡一時金の両方が発生する場合には一方を選択受給することになります。

 

 通常は年金と一時金の給付内容の差から寡婦年金の方が有利となることが多いですが、場合によっては死亡一時金の方が有利となるケースがあるため選択は慎重にする必要があります。

 

 なお、寡婦年金と死亡一時金では選択受給となりますが、遺族厚生年金と死亡一時金が同時に発生する場合には制度が異なるため寡婦年金とは異なり両方とも受給できることになる点にも注意が必要です。

 

 死亡一時金を受給できる遺族については、生計同一関係のあった配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順位で支給対象者が決定されることになります。

死亡一時金とは②

 死亡一時金の額については、保険料納付月数に応じて以下のようになります。

 

1.36月以上180月未満:120,000円

 

2.180月以上240月未満:145,000円

 

3.240月以上300月未満:170,000円

 

4.300月以上360月未満:220,000円

 

5.360月以上420月未満:270,000円

 

6.420月以上:320,000円

 

 上記の他、付加保険料を3年以上納めている場合には、死亡一時金に8,500円が加算されることになります。

  

 このように、納めた国民年金保険料相当額の一時金が支給されるわけではありませんので注意が必要となります。

死亡一時金とは①

 死亡一時金も国民年金法による遺族給付ですが、遺族基礎年金や寡婦年金と異なり一時金による支給となります。

 

 死亡一時金の支給対象となるのは国民年金第1号被保険者であった期間が36月(3年)以上ある方の死亡の場合に対象となります。

 

 言い換えると、国民年金第2号被保険者や国民年金第3号被保険者のように国民年金保険料を納めていない期間では対象となりません。

 

 また、保険料納付済期間を1月とするのに対し、保険料免除期間については、4分の1免除期間は4分の3月、半額免除期間は2分の1月、4分の3免除期間は4分の1月と納めた期間に応じて納付月数に換算しますが、全額免除の場合は保険料を納めていないため0月となるため注意が必要です。

 

 上記の保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が36月以上ある場合に死亡一時金が支給される扱いとなります。

寡婦年金とは③

 寡婦年金を受給するためには前回までに触れた要件の他に以下の要件も必要となります。

 

1.老齢基礎年金を繰上げ受給していないこと

 

 寡婦年金は死亡した夫が掛けていた国民年金第1号被保険者期間の掛け捨て防止の為の制度です。

 

 そのため、夫が既に自分の老齢基礎年金を繰上げ受給している場合は掛け捨てになっていないため寡婦年金の支給対象外となります。

 

 また、妻が自分の老齢基礎年金を繰上げ受給している場合も既に所得補償がなされていることになるため、この場合にも寡婦年金は支給対象とはならないことになります。

 

2.10年以上の婚姻期間の継続

 

 遺族厚生年金には婚姻期間の継続は求められていませんが、寡婦年金の場合には10年以上の婚姻期間の継続が要件となるため注意が必要となります。

 

 また、この婚姻継続期間は事実婚であった期間を含みます。

 

3.生計維持関係

 

 寡婦年金を受給するには生計維持関係があることが必要です。

 

 生計維持ですので、生計同一であるほかに所得要件が問われます。

 

 生計同一であることは住民票が同一であることや申立てによって証明し、所得は850万円未満の年収(所得では655.5万円未満)である必要があり、この要件を満たせない場合は寡婦年金を受給することは出来ないことになります。

寡婦年金とは②

 寡婦年金は寡婦となった妻が60歳から65歳になるまで支給されることになる有期年金です。

 

 上記の年齢に達していない場合には寡婦年金の受給権が発生していてもその期間は支給停止となります。

 

 また、寡婦年金額は、夫が65歳から受給するはずであった老齢基礎年金額の4分の3の額となっており、全額を寡婦年金として受給することが出来るわけではありません。

 

 寡婦年金の立ち位置としては、65歳から妻が受給する老齢基礎年金までのつなぎの年金としての役割ということになります。

 

 但し、65歳になるまでに他に特別支給の老齢厚生年金や遺族厚生年金等の受給権がある場合には選択受給となるため注意が必要となります。

寡婦年金とは①

 国民年金法による遺族給付には寡婦年金があります。

 

 「寡婦」といっているように対象となるのは配偶者ではなく妻のみである点に特徴があります。

 

 寡婦年金は死亡した夫が「国民年金第1号被保険者」として保険料納付済期間または保険料免除期間が10年以上必要となります。

 

※平成29年8月までは10年ではなく25年以上の保険料納付済期間または免除期間が必要でしたが、平成29年8月以降の夫の死亡の場合には10年以上で寡婦年金の支給要件を満たすことになります。

 

 但し、国民年金第1号被保険者といっているように、寡婦年金が支給されるためには実際に国民年金保険料を納めるか免除を受けている期間が10年以上あることが前提です。

 

 厚生年金被保険者が対象となる国民年金第2号被保険者や、厚生年金被保険者の被扶養配偶者が対象となる国民年金第3号被保険者では要件を満たすことが出来ませんので注意が必要となります。

遺族基礎年金とは③

 遺族基礎年金とは子があることが前提ですので子のない配偶者には遺族基礎年金が支給される余地がありませんが、子にも遺族基礎年金の受給権が発生しますので子のみの場合でも遺族基礎年金の受給は可能です。

 

 但し、子の遺族基礎年金は生計同一の父または母がいる場合には支給が停止されます。

 

 例えば離婚した夫が死亡した場合には元妻に遺族基礎年金の受給権は発生しませんが子に遺族基礎年金の受給権は発生します。

 

 しかし、このとき子は夫と離婚した元妻と生計同一となっていることが通常かと思いますので結果的に子に遺族基礎年金は支給停止となることになります。

 

 なお、遺族基礎年金を支給すべき子が複数いる場合は人数に応じて等分した額を子に支給することになります。

 

 また、子のある配偶者が遺族基礎年金を受給するときは、子の人数に応じて一定額の加算がなされることになります。 

遺族基礎年金とは②

 遺族基礎年金を請求する場合には次のいずれかの要件に該当する必要があります。

 

1.保険料納付要件が関係する

 

ア.国民年金被保険者の死亡

 

 国民年金被保険者となるのは任意加入被保険者や特例任意加入被保険者を除けば20歳から60歳までの期間です。

 

 この国民年金被保険者が死亡した場合には遺族基礎年金の対象となりますが、保険料納付要件が問われますので、死亡日の前日において前々月までの保険料納付済期間、保険料免除期間等が3分の2以上あるか、直近1年の期間で未納期間がない必要があります。

 

 但し、直近1年要件が適用されるのは65歳未満の方の死亡である場合に限られるので注意が必要です。

 

イ.国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の国内に住所を有していた者の死亡

 

 このイに該当する場合も該当となりますが、適用されるには上記の保険料納付要件を満たす必要があります。

 

 なお、この期間を遺族基礎年金の対象とするのは、老齢基礎年金が65歳以降であることであることと、65歳までの給付の厚生年金保険法との均衡が前提にあります。

 

2.保険料納付要件が関係しない

 

ウ.老齢基礎年金の受給権者または受給資格期間を満たした者の死亡

 

 この要件に該当する方は、保険料納付済期間や保険料免除期間等を合わせて25年以上あることが前提となります。

 

 この要件を満たす場合には保険料納付要件は問われないことになります。

遺族基礎年金とは①

 遺族基礎年金は国民年金法による遺族給付であり、対象者となるのは子のある配偶者または子となっています。

 

※平成26年4月までは子のある「妻」が対象でしたが、法改正により平成26年4月以降の対象者の死亡においては子のある「配偶者」が対象となり、夫にも遺族基礎年金が支給されることになっています。

 

 つまり、遺族基礎年金は「子」がいることが前提となっており、子がいない方の死亡の場合には遺族基礎年金の支給対象とはならないため注意が必要です。

 

 また、対象となる子は18歳到達年度末までの子であるか、または、20歳未満で障害等級1級か2級の状態である必要があります。

 

 なお、18歳到達年度末といっているように、子が18歳に到達したときではなく一般的な高校生卒業年度が基準となっています。

 

 また、障害等級1、2級の状態に相当する子が20歳までの加算に延長されるのは、その後に子が自らの障害基礎年金を受給することを想定しているためであるといえます。

遺族年金とは

 日本における公的年金制度は老齢年金制度、障害年金制度の他、遺族年金制度があります。

 

 遺族年金制度は国民年金法によるものと厚生年金保険法によるものの2つに大別され、それぞれの法律に基づき、主として以下のような様々な遺族への給付が行われることになります。

 

1.遺族基礎年金

 

 国民年金法による遺族給付の一つであり、18歳の年度末到達前の子がいる場合の給付。

 

2.寡婦年金

 

 国民年金法による遺族給付の一つであり、60歳から65歳になるまでの寡婦(妻)に対する給付。

 

3.死亡一時金

 

 遺族基礎年金が支給されない場合に、国民年金保険料の納付状況により支給される給付。

 

4.遺族厚生年金

 

 厚生年金保険法による給付であり、一定の条件に該当する遺族に対して支給される給付。

 

 上記の様な給付を総称して遺族給付と呼び、その状況に応じて様々な給付が行われることになっています。

労働者災害補償保険法と障害年金

障害年金と関連性が深い給付としては労働災害(通勤災害)による障害(補償)年金があります。

 

 一般的に労働者災害補償保険法による障害(補償)年金を受給する場合には、当該受けた傷病により障害年金も同時に受けることになることが多くあります。

 

 この障害(補償)年金と障害年金については同時に併給することは可能なのですが、全ての年金額が支給されるわけではなく、どの年金を受けるかによって一定割合で障害(補償)年金の併給調整が行われることになります。

 

 具体的には、障害厚生年金と障害基礎年金を同時受給する場合は障害(補償)年金額が73%に減額され、障害厚生年金のみの場合は83%、障害基礎年金のみの場合は88%まで減額されます。

 

※障害(補償)年金は傷病が症状固定とされ障害が残った場合に支給される年金であり、症状固定しておらず傷病が治っていない場合には傷病(補償)年金となり、こちらの場合は障害厚生年金のみ受給する場合には88%にまでの減額調整となります。

 

 なお、障害(補償)年金の併給調整となるのは障害年金のみであり、老齢年金等の他の年金は併給調整の対象とはならないため、併給調整を受けるより他の年金を受給した方が有利となる場合もあるため、併給調整対象となる場合は注意が必要となります。

障害厚生年金と障害共済年金

 被用者年金が一元化されるまでは共済組合にも障害年金制度は存在していましたが、障害厚生年金ではなく障害共済年金という独自の年金制度により運用がなされていました。

 

 この障害共済年金については障害厚生年金と比べて以下の点で異なっていました。

 

ア.職域加算が存在する

 

 共済組合の場合は厚生年金とは異なり年金支給の場合には在職期間に応じて職域加算が付加されます。なお、一元化以降もこの職域加算制度は廃止されてはおらず、経過的職域加算として存続しています。

 

イ.在職支給停止が存在する

 

 一元化前の障害共済年金を受給する際には在職支給停止の対象となっており、在職している場合は障害共済年金が支給されない場合もありましたが、一元化以降は障害基礎年金・障害厚生年金同様に在職支給停止が行われなくなっています。

 

ウ.保険料納付要件が問われない

 

 一元化前の障害共済年金については、在職していることが条件であり保険料納付要件を問わなかったため、保険料納付要件を満たしていない場合でも障害共済年金のみ受給可能な場合がありました。

 

※一元化前でも障害基礎年金は保険料納付要件が問われるため、2級以上の障害であっても保険料納付要件を満たしていない場合は障害共済年金のみの支給となります

 

 しかし、一元化以降は保険料納付要件が問われることとなったため、在職しているだけでは障害年金を受給することはできないこととなりました。

 

 一元化以降は共済組合制度は厚生年金制度に統合され、基本的に厚生年金制度が踏襲されていますが、共済組合独自の制度が完全に廃止されているわけではありませんので、共済組合制度について理解しておくことは非常に重要であるといえます。

障害年金と他の年金

 年金は老齢年金、障害年金、遺族年金などの年金に分かれていますが、場合によってはこれらの年金の受給権を複数取得する場合があります。

 

 その場合であっても現在、年金を受給する場合の原則は1人1年金となっており、原則として支給事由が異なる年金は同時に受給することは出来ません。

 

※支給事由が同一である場合には併給は可能です。例えば障害基礎年金と障害厚生年金は同一事由による給付といえますのでこちらは併給可能となります。

 

 例えば、65歳前に特別支給の老齢厚生年金の他に障害年金の受給権を持っている場合であっても、両者の支給事由が異なるために併給することはできません。

 

 このため、このケースでは様々な内容を考慮して受給が有利となるような併給選択をする必要があります。

 

※併給選択を検討する場合は、通常、年金額が大きくなるように選択を行いますが、傷病手当金や基本手当を受給していたり、税額等の関係で年金額が高いものを選択することが必ずしも有利ではない場合があるため注意を要します。

 

 但し、年金受給者が65歳に到達した場合には他年金との併給が可能となる場合があります。

 

 例えば老齢厚生年金と老齢基礎年金、障害基礎年金と障害厚生年金の受給権を有している方が65歳になった場合には次の3パターンの選択が出来ます。

 

ア.老齢基礎年金+老齢厚生年金

 

イ.障害基礎年金+障害厚生年金

 

ウ.障害基礎年金+老齢厚生年金

 

 アとイは通常通りの同一支給事由による選択、ウが障害年金と老齢年金の選択パターンとなります。

 

 このケースでは基本的には年金額が高額のものを選択することになりますが、障害年金は非課税であること、障害基礎年金を受けられる場合は障害等級2級以上であり、老齢基礎年金の満額と同等以上であるということを考慮すると、通常はイかウを選択することになります。

 

 なお、上記のケースで他に遺族厚生年金の受給権がある場合には、障害基礎年金と遺族厚生年金の併給も可能となっているため更に慎重に選択が必要となります。

傷病手当金と障害年金

 障害年金を受給するには原則として初診日から1年6ヶ月を経過した日である障害認定日を経る必要がありますが、これを前提とすると障害認定日が到来するまでの期間は老齢年金や遺族年金等の他の年金給付を受けている場合を除いて年金給付による所得補償を受けることができない空白の期間が生じることになってしまいます。

 

 その制度上の空白期間を埋める給付として健康保険による傷病手当金があり、傷病手当金は最長で1年6ヶ月の期間受給することができるため、この傷病手当金を受給することによって所得補償の空白期間を埋めることが可能となっています。

 

※傷病手当金は健康保険独自の制度であり、自営業等と異なる独自の収入源がない労働者のための制度です。そのため、一部の例外を除いて国民健康保険については傷病手当金がないという点に注意を要します。

 

 このため、通常は傷病手当金による所得補償を受けながら障害認定日に到達した時点で障害年金を請求し障害年金に切り替えるという流れが一般的ではありますが、障害認定日の特例等により障害年金と傷病手当金を同時に受給することが可能な場合があります。

 

 但し、障害年金と傷病手当金を同時に受給できる場合では、傷病手当金は原則全額支給停止であり、障害年金と傷病手当金の額を比較して傷病手当金の額が障害年金を上回る場合にのみ差額支給が行われることになっています。

 

 また、老齢年金の場合には在職中は傷病手当金との支給調整はなされませんが、退職後も傷病手当金を受給する場合には上記の差額支給の考え方により老齢年金と傷病手当金も併給調整の対象となります。

 

 なお、傷病手当金との併給調整の考え方については、同一傷病が原因により傷病手当金と障害年金を受ける場合に調整対象となり、別傷病が原因の場合は併給調整の対象とはならないこととなります。